返り点、括弧、集合数(3.5)。 - 返り点に対する「括弧」の用法について提案

返り点、括弧、集合数(3.5)。

(01)
漢文非中華人民共和国語也。以是、
中国語直読法雖盛而中国語不可以読中夏之書審也。
如日本之学生有欲能読白文者則宜以括弧学其管到。
(02)
漢文は中華人民共和国語に非ざるなり。是を以て、
中国語直読法は盛んなりと雖も、中国語は以て中華の書を読む可から不ること審かなり。
如し日本の学生に能く白文を読まんと欲する者有らば則ち、宜しく括弧を以て其の管到を学ぶべし。
(03)
(a)漢文の補足構造は、「括弧」で表すことが出来る。
(b)補足構造を除くと、漢文と訓読の「語順」は、等しい。
(c)漢文の補足構造を「集合数」で表した時、訓読の語順は、「順序数」である。
といふ「三つの条件」の元で、例へば、
人有喜与不如己者為友之心=
人有〈喜{与[不〔如(己)〕者]為(友)}之心〉=
1C〈9{6[4〔3(2)〕5]8(7)}AB〉⇒
1〈{[〔(2)3〕45]6(7)8}9AB〉C=
人〈{[〔(己)如〕不者]与(友)為}喜之心〉有=
人に〈{[〔(己に)如か〕不る者]と(友と)為るを}喜ぶの心〉有り。
人には、自分よりも劣った者と(気楽な)友達になるのを喜ぶ心がある(金沢大学入試問題)。
といふ「括弧による、ソート(漢文訓読)」が、成立する。
(04)
C=囗囗囗囗囗囗囗囗囗囗囗囗
B=囗囗囗囗囗囗囗囗囗囗囗
A=囗囗囗囗囗囗囗囗囗囗
9=囗囗囗囗囗囗囗囗囗
8=囗囗囗囗囗囗囗囗
7=囗囗囗囗囗囗囗
6=囗囗囗囗囗囗
5=囗囗囗囗囗
4=囗囗囗囗
3=囗囗囗
2=囗囗
1=囗
に於いて、
CはBを含み、
BはAを含み、
Aは9を含み、
9は8を含み、
8は7を含み、
7は6を含み、
6は5を含み、
5は4を含み、
4は3を含み、
3は2を含み、
2は1を含む。
といふ際の、
C B A 9 8 7 6 5 4 3 2 1。
16進数を、「集合数」とし、
1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目、A番目、B番目、C番目。
といふ際の、16進数、
123456789ABC。
を、「順序数」とする。
(05)
1C96432587AB。
人有喜与不如己者為友之心。
に於いて、
C といふ「集合数」は、「96432587AB」といふ「十個の集合数」を含むものの、是を以て、
1C(96432587AB)。
人有(喜与不如己者為友之心)。
といふ風に、「括弧」で括る。
(06)
1C(96432587AB)。
人有(喜与不如己者為友之心)。
に於いて、
9 といふ「集合数」は、「6432587」といふ「七個の集合数」を含むものの、是を以て、
1C〔9(6432587)AB〕。
人有〔喜(与不如己者為友)之心〕。
といふ風に、「括弧」で括る。
(07)
1C〔9(6432587)AB〕。
人有〔喜(与不如己者為友)之心〕。
に於いて、
6 といふ「集合数」は、「4325」といふ「四個の集合数」を含むものの、是を以て、
1C[9〔6(4325)87〕AB]。
人有[喜〔与(不如己者)為友〕之心]。
といふ風に、「括弧」で括る。
(08)
1C[9〔6(4325)87〕AB]。
人有[喜〔与(不如己者)為友〕之心]。
に於いて、
4 といふ「集合数」は、「32」といふ「二個の集合数」を含むものの、是を以て、
1C{9[6〔4(32)5〕87]AB}。
人有{喜〔与〔不(如己)者〕為友]之心}。
といふ風に、「括弧」で括る。
(09)
1C{9[6〔4(32)5〕87]AB}。
人有{喜[与〔不(如己)者〕為友]之心}。
に於いて、
3 といふ「集合数」は、「2」といふ「一個の集合数」を含むものの、是を以て、
1C〈9{6[4〔3(2)〕5]87}AB〉。
人有〈喜{与[不〔如(己)〕者]為友}之心〉。
といふ風に、「括弧」で括る。
(10)
1C〈9{6[4〔3(2)〕5]87}AB〉。
人有〈喜{与[不〔如(己)〕者]為友}之心〉。
に於いて、
8 といふ「集合数」は、「7」といふ「一個の集合数」を含むものの、是を以て、
1C〈9{6[4〔3(2)〕5]8(7)}AB〉。
人有〈喜{与[不〔如(己)〕者]為(友)}之心〉。
といふ風に、「括弧」で括る。
然るに、
(11)
管到というのは「上の語が、下のことばのどこまでかかるか」ということである。なんことはない。諸君が古文や英語の時間でいつも練習している、あの「どこまでかかるか」である。漢文もことばである以上、これは当然でてくる問題である(二畳庵主人、漢文法基礎、1984年、389頁)。
従って、
(10)(11)により、
(12)
人有〈喜{与[不〔如(己)〕者]為(友)}之心〉。
に於ける、
〈{[〔( )〕]( )}〉
は、「管到」を表してゐる。
然るに、
(13)
人有〈喜{与[不〔如(己)〕者]為(友)}之心〉=
1C〈9{6[4〔3(2)〕5]8(7)}AB〉⇒
1〈{[〔(2)3〕45]6(7)8}9AB〉C=
人〈{[〔(己)如〕不者]与(友)為}喜之心〉有=
人に〈{[〔(己に)如か〕不る者]と(友と)為るを}喜ぶの心〉有り。
然るに、
(14)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。その補足構造における語順は、国語とは全く反対である(鈴木直治著、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(12)(13)(14)により、
(15)
人有喜与不如己者為友之心。
に於ける、
〈{[〔( )〕]( )}〉
といふ「括弧」は、
人有喜与不如己者為友之心。
といふ「漢文」の、「管到(補足構造)」を表してゐて、尚且つ、
人有喜与不如己者為友之心。
に於ける、
〈{[〔( )〕]( )}〉
といふ「管到(補足構造)」が分れば、
人有喜与不如己者為友之心=
人有〈喜{与[不〔如(己)〕者]為(友)}之心〉=
1C〈9{6[4〔3(2)〕5]8(7)}AB〉⇒
1〈{[〔(2)3〕45]6(7)8}9AB〉C=
人〈{[〔(己)如〕不者]与(友)為}喜之心〉有=
人に〈{[〔(己に)如か〕不る者]と(友と)為るを}喜ぶの心〉有り。
といふ「ソート(並び替へ)」により、
人に己に如か不る者と友と為るを喜ぶの心有り。
といふ「訓読」を、得ることに、なる。
然るに、
(16)
人有喜与不如己者為友之心=
人有〈喜{与[不〔如(己)〕者]為(友)}之心〉=
1C〈9{6[4〔3(2)〕5]8(7)}AB〉⇒
1〈{[〔(2)3〕45]6(7)8}9AB〉C=
人〈{[〔(己)如〕不者]与(友)為}喜之心〉有=
人に〈{[〔(己に)如か〕不る者]と(友と)為るを}喜ぶの心〉有り。
の「返り点」は、
乙 下 二 レ レ 一 上レ 甲
であるが、
人有喜与不如自分者為友人之心=
人有〈喜{与[不〔如(自分)〕者]為(友人)}之心〉=
1C〈9{6[4〔3(22)〕5]8(77)}AB〉⇒
1〈{[〔(22)3〕45]6(77)8}9AB〉C=
人〈{[〔(自分)如〕不者]与(友)為}喜之心〉有=
人に〈{[〔(自分に)如か〕不る者]と(友人と)為るを}喜ぶの心〉有り。
の「返り点」は、
地 丙 下 三 二 一 上 乙 甲 天
である。
cf.
BLGRJ15
従って、
(16)により、
(17)
〈{[〔( )〕]( )}〉
〈{[〔( )〕]( )}〉
といふ「括弧」に対して、
乙 下 二 レ レ 一 上レ 甲
地 丙 下 三 二 一 上 乙 甲 天
といふ具合に、「返り点」は、「一通り」ではない。
従って、
(17)により、
(18)
「返り点」は、「順番」を表してゐるとしても、「補足構造(管到)」を表してゐるとは言へない。
(19)
更に言ふと、「返り点」は、「レ点とハイフン」の用法が、恣意的であって、それ故、分かりやすいとは、言へない。
(20)
人有喜与不如己者為友之心。
のやうな「白文」を読めるようになりたいのであれば、「然るべき例文」を、PCに入力するなり、ノートに書き写すなりして、「返り点」が付いてゐない「白文」を、自分で、用意するしかない。
(21)
その際に、例へば、
人有喜与不如己者為友之心。
の「補足構造」が、直ぐには、分らなかったとしたら、その場合は、
人有〈喜{与[不〔如(自分)〕者]為(友人)}之心〉。
といふ風に、「括弧」を用ゐて、「管到(補足構造)」を確認すれば良いのであって、
有読書者。
のやうな、簡単な例文まで、わざわざ、
有〔読(書)者〕。
とする必要はない。
平成27年06月15日、毛利太。

コメント (0)
コメントの投稿
前のページ(返り点、括弧、中国語(白話)。)
次のページ(語順、括弧、返り点(1.5)。)
プロフィール

タカ

Author:タカ
写真は蛍雪時代(高三)。この頃に、漢文が好きになりました。

リンク
このブログをリンクに追加する
最近の記事
月別アーカイブ
ブログ内検索
RSSフィード
最近のコメント