敢不、不敢(Ⅱ)。 - 返り点に対する「括弧」の用法について提案

敢不、不敢(Ⅱ)。

(01)
「敢」は、「しにくいことを押し切ってする」の意。
(笠間書院、漢文の語法と故事成語、2005年、60頁)
従って、
(01)により、
(02)
① 敢視=(視たくなくとも、その気持ちを押し切って、)視る。
然るに、
(03)
① 敢視=(視たくなくとも、その気持ちを押し切って、)視る。
といふことは、
① 敢視=(視たくなくとも、それよりも、視たい気持ちが上回るので、)視る。
といふ、ことである。
然るに、
(04)
①(視たくなくとも、それよりも、視たい気持ちが上回る。)
②(視たくとも、それよりも、視たくない気持ちが上回る。)
に於いて、
①と②は、「矛盾」する。
従って、
(04)により、
(05)
①(視たくなくとも、それよりも、視たい気持ちが上回る。)
の「否定」は、
②(視たくとも、それよりも、視たくない気持ちが上回る。)
である。
従って、
(03)(05)により、
(06)
① ~敢視。すなはち、
敢視。の「否定」は、
② 不敢視=(視たくとも、それよりも、視たくない気持ちが上回るので、)視ない。
といふ、ことになる。
然るに、
(07)
② 昆弟妻嫂、側目不敢視。
② 昆弟妻嫂、目を側めて敢へて視ず。
② 兄弟、妻、兄嫁は目をそらして、進んでまともに蘇秦を視ようとしなかった(蘇秦の威光を恐れたので)
(多久弘一、多久の漢文公式110、1988年、23頁)
然るに、
(08)
② 視ようとしなかった(蘇秦の威光を恐れたので)
といふ言ひ方は、この場合は、
②(蘇秦の威光を恐れたので、視ないのではなく、)視なかった。
と、すべきである。
(09)
② 趙亦盛爲之備。秦不敢動。
② 趙も亦盛んに之が備へを爲す。秦敢へて動かず。
② 趙もまた盛んに秦に対する軍備をしたので、さすがの秦も手の出しようがなかった。
(明治書院、十八史略 上、1967年、114・5頁)
然るに、
(10)
② さすがの秦も手の出しようがなかった。
といふことは、
②(手を出したくとも、)手出しが出来なかった。
といふことに、他ならない。
従って、
(09)(10)により、
(11)
② 秦不動=秦敢へて動かず。
の場合は、
② 秦不動=秦動く能はず。
としても、あまり、変はらない。
加へて、
(12)
② 莫仰視≒
② 莫仰視。
であるためか、どうかは、分らないものの、
② 左右皆泣莫仰見(明治書院、史記 二 本記、1973年、494頁)。
② 左右皆泣莫仰見(笠間書院、漢文の語法と故事成語、2005年、60頁)。
といふ風に、何故か、
② 能(CAN)が、
② 敢 に、置き換はってゐる。
従って、
(06)(08)(10)(12)により、
(13)
敢視=(視たくなくとも、それよりも、視たい気持ちが上回るので、)視る。
の「否定」は、
② 不敢視=(視たくとも、それよりも、視たくない気持ちが上回るので、)視ない。
ではなく、
② 不敢視=(視たくとも、それよりも、視たくない気持ちが上回るので、)視ない。
と、すべきである。
従って、
(14)
敢言=(言ひたくなくとも、)敢へて言ふ。
敢言=(言ひたくとも、)言ない。
と、すべきである。
(15)
③ 敢(不言)。
は、
① 敢(言)。
の、
言 が、
③ 不言 に、変はったに、過ぎない。
従って、
(14)(15)により、
(16)
敢言=(言ひたくなくとも、)敢へて言ふ。
③ 敢不言=(言ひたくとも、)敢へて言はない。
(17)
④ 不敢(不言)。
は、
② 不敢(言)。
の、
② 言 が、
④ 不言 に、変はったに、過ぎない。
(14)(17)により、
(18)
不敢言=(言ひたくとも、)言ない。
④ 不敢不言=(言ひたくなくとも、)言はずにゐることが、出来ない。
と、すべきである。
従って、
(18)により、
(19)
④ 不敢不告=
④(告げたくなくとも、)告げないことが、出来ない=
④ どうしても告げないわけにはいかない(鳥羽田重直、漢文の基礎、1985年、53頁)。
である。
従って、
(14)(16)(18)により、
(20)
不不敢言=(言ひたくなくとも、)敢へて言ふ。
敢言=(言ひたくとも、)言ない。
敢不言=(言ひたくとも、)敢へて言はない。
敢不言=(言ひたくなくとも、)言はずには、ゐれない。
といふ、ことになる。
(20)
③ 百獣の我を見て敢へて走らざらんや(反語)。
であれば、
③ 敢不走乎=(逃げたくとも、)敢へて逃げない。といふことが、有るだらうか(、否、獣たちは、私の姿を見れば、必ず逃げるに違ひない)=
敢不走=逃げないことを、決してしない。
といふ、ことになる。
平成27年07月14日、毛利太。
cf.
7月15日B 
dfhhyjkjukさん
2014/4/1722:46:25
文字のかかりかたを数学的に考えればわかります(分配法則)。
敢不は「わざと~しない」。「どうして教えてくれなかったんだ?」「君寝てたし、起しちゃ悪いと思って、あえて起さなかった」という感じ。
不敢は「わざわざ~することはしない」。「もっと言ってやれよ」「わざわざ火に油を注ぐようなことはしません」という感じ。
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