「白話(中国語)」に於ける「返り点」Ⅱ。 - 返り点に対する「括弧」の用法について提案

「白話(中国語)」に於ける「返り点」Ⅱ。

(01)
①( )
②〔 〕
③[ ]
④{ }
⑤〈 〉
に於いて、
⑤の中には、一つ以上の④が有り、
④の中には、一つ以上の③が有り、
③の中には、一つ以上の②が有り、
②の中には、一つ以上の①が有り、
①の中には、一つも、①が無い。
ならば、その時に限って、「括弧」とする。
従って、
(01)により、
(02)
① { [ 〔 ( ) 〕 ]( ) }
は、「括弧」であるが、
④ ( 〔 )
を含む、
④ ( 〔 ) 〕
は、「括弧」ではない。
(03)
① 一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・ ・ ・ ・ ・
② 上 中 下
③ 甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
④ 天 地 人
に於いて、
① を挟んで返る場合に、
② を用ゐ、
② を挟んで返る場合に、
③ を用ゐ、
③ を挟んで返る場合に、
④ を用ゐる。
ならば、その時に限って、「返り点(レ点を除く)」とする。
従って、
(03)により、
(04)
① 丙 下 三 二 一 上 乙 甲
は、「返り点」であるが、
④    二 上 一
を含む、
④ 下 二 上 一
は、「返り点」ではない。
(05)
① 丙 下 三 二 一 上 乙 甲
は、「返り点(レ点を除く)」であるが、
② 乙 下 二 一レ 上 甲レ
は、「返り点(レ点を除く)」ではない。
然るに、
(06)
君子不2
従って、
(06)により、
(07)
② 乙 下 二 一レ 上 甲レ
といふ「返り点」は、
① 丙 下 三 二 一 上 乙 甲
といふ「返り点」に、「置き換へ」ることが、出来る。
然るに、
(08)
① 8{5[3〔2(1)〕4]7(6)}
に於いて、
① 8{ }
① 5[ ]
① 3〔 〕
① 2(1)
① 7(6)
といふ「配置」を、
①{ }8 
①[ ]5
①〔 〕3
①(1)2
①(6)7
といふ「配置」に換へると、
① 8{5[3〔2(1)〕4]7(6)}⇒
① {[〔(1)2〕34]5(6)7}8=
① 1 2 3 4 5 6 7 8 
といふ「ソート(並び替へ)」が、成立する。
従って、
(08)により、
(09)
① 8=丙
① 5=下
① 3=三
① 2=二
① 1=一
① 4=上
① 7=乙
① 6=甲
とすると、
① 丙{下[三〔二(一)〕上]乙(甲)}⇒
①{[〔(一)二〕三上]下(甲)乙} 丙=
① 一 二 三 上 下 甲 乙 丙
といふ「ソート(並び替へ)」が、成立する。
従って、
(09)により、
(10)
① 丙=不
① 下=以
① 三=所‐以
① 二=養
① 一=人
① 上=者
① 乙=害
① 甲=人
といふ「代入」を行ふと、
① 君子丙下其三二邑一上乙邑甲=
① 君子丙{下[其三〔二(邑一)〕上]乙(邑甲)}⇒
① 君子{[其〔(邑一)二〕三上]下(邑甲)乙}丙=
① 君子{[其〔(邑人)養〕所‐以者]以(邑人)害}不=
① 君子は{[其の〔(邑人を)養ふ〕所‐以の者を]以て(邑人を)害せ}不。
といふ「漢文訓読」が成立する。
従って、
(06)(07)(10)により、
(11)
② 君子丙下其三二一上乙甲=
② 君子丙{下[其三〔二(一)〕上]乙(甲)}⇒
② 君子{[其〔(一)二〕三上]下(邑)乙}丙=
② 君子{[其〔(人)養〕所‐以者]以(人)害}不=
② 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所‐以の者を]以て(人を)害せ}不。
といふ「漢文訓読」が成立する。
然るに、
(12)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。その補足構造における語順は、国語とは全く反対である(鈴木直治著、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(10)(11)(12)により、
(13)
例へば、
① 君子不以其所以養邑人者害邑人=
① 君子不{以[其所‐以〔養(邑人)〕者]害(邑人)}⇒
① 君子{[其〔(邑人)養〕所‐以者]以(邑人)害}不=
① 君子は{[其の〔(邑人を)養ふ〕所‐以の者を]以て(邑人を)害せ}不。
といふ「漢文訓読」は、
① 君子不以其所以養邑人者害邑人。
に於ける、
①「補足構造」ではない部分をそのままにして、
①「補足構造」の部分の「左右」を「入れ換へる」。
といふことに、他ならない。
然るに、
(14)
有読漢文者
従って、
(13)(14)により、
(15)
③ 有読漢文者=
③ 有〔読(漢文)者〕⇒
③ 〔(漢文)読者〕有=
③ 〔(漢文を)読む者〕有り。
といふ「漢文訓読」は、「縦書き」であれば、
③「補足構造」ではない部分をそのままにして、
③「補足構造」の部分の「上下」を「入れ換へる」。
といふことに、他ならない。
然るに、
(16)
③ 有読漢文者=漢文を読む者有り。
④ 有読者漢文=読む者有り。漢文。
従って、
(16)により、
(17)
③ 有読漢文者=漢文を読む者有り。
に対して、
④ 有読者漢文=漢文を読む者有り。
といふ「漢文訓読」は、有り得ないものの、それでも敢へて、
④ 有読者漢文=漢文を読む者有り。
と読まうとすれば、「返り点・括弧」は、(18)のやうになる。
(18)
有読者漢文  
然るに、
(02)(03)(04)(18)により、
(19)
③ 下 二 一 上
といふ「返り点」に対して、
④ 下 二 上 一
といふ「返り点」は、有り得ないし、
③  〔 ( ) 〕
といふ「括弧」に対して、
④  ( 〔 )
④ [ ( 〔 ) 〕 ]
といふ「括弧」も、有り得ない。
従って、
(14)(19)により、
(20)
③ 下 二 一 上
③ 4<2>1<3
といふ「順番」ではなく、
④ 下 二 上 一
④ 4>2<3>1
といふ「順番」に対しては、「返り点・括弧」を加へることは、出来ない。
(21)
「結論」から言ふと、
(17)~(20)に加へて、次に示す、
(22)~(26)により、
与えられた「順番」の中に、
④ 2<3>1
のやうな「順番」、すなはち、
④ 1+1<3>1
のやうな「順番」、すなはち、
④ N+1<M>N
がある場合には、その「順番」に対して、「返り点・括弧」を加へることは、出来ない。
(22)
例へば、
① 丙 下 三 二 一 上 乙 甲
① 8>5<3>2>1<4<7>6
の中には、
① N+1<M>N
を満たす「順番」は無い。
然るに、
(23)
② 下 丙 三 二 一 乙 上 甲
② 5<8<3>2>1<7>4<6
であれば、
② 5<8>4
② 5<7>4
であるため、
② N+1<M>N
を満たす「順番」が、二つ有る。
然るに、
(24)
 下 三 二 一 上  甲
に対して、
② 下  三 二 一  上 甲
の場合は、
② 下 丙 乙 上
を含むため、すなはち、
② 上 下 
の間に、
② 乙 丙
が有るため、(03)により、
下 丙 三 二 一 乙 上 甲
は、「返り点」ではない。
加へて、
(25)
① 8{5[3〔2(1)〕4]7(6)}
② 5[8〈3〔2(1)〕7{4]6}〉
であるものの、(01)により、
① { [ 〔 (  ) 〕 ](  ) }
に対して、
② [ 〈 〔 (  ) 〕{  ] } 〉
は、「括弧」ではない。
加へて、
(26)
① 君子不以其所以養邑人者害邑人=
① 君子は其の邑人を養ふ所以の者を以て邑を害せ不。
ではなく、
② 君子以不其所以養邑人害者邑人=
② 君子は其の邑人を養ふ所以の者を以て邑を害せ不。
に於ける、
② 不其
といふ「語順」は、固より、有り得ない。
従って、
(17)~(26)により、
(27)
与えられた「順番」が、
④ 2<3>1
のやうな「順番」、すなはち、
④ N+1<M>N
といふ「順番」を含む場合、その「順番」に対して、「返り点・括弧」を加へることは、出来ない。
然るに、
(28)
九葉ウラ然るに、
(29)
⑤ 下 二 上 一
⑥ 二 五 三 一 四
⑦ 二 三レ 一
といふ『それ』は、
⑤ 4>2<3>1
⑥ 2<5>3>1<4
⑦ 2<4>3>1
といふ「順番」であるため、
⑤ 2<3>1
⑥ 2<5>1
⑥ 2<3>1
⑦ 2<4>1
⑦ 2<3>1
といふ「順番」、すなはち,
④ N+1<M>N
といふ「順番」を含んでゐる。
従って、
(27)(28)(29)により、
(30)
⑤ 只‐管要纏我 ⇒
⑤ ヒタスラ 我ガ ヤツカイニナル。
⑥ 端‐的看不出這婆‐子的本‐事来 ⇒
⑥ 端的に這の婆子の本事を看出だし来たらず。
⑥ 西門慶促‐忙促-急儧‐造不出床来 ⇒
⑥ 西門慶促忙促急に床を儧造し出し来たらず。
⑦ 吃了不多酒 ⇒
⑦ 吃むこと多からず。
といふ「白話(中国語)」に対しては、「返り点・括弧」を加へることは、出来ない。
加へて、
(31)
「古田島洋介、これならわかる返り点―入門から応用まで―、2009年」の中にも、
⑤ 下 二 上 一
⑥ 二 五 三 一 四
⑦ 二 三レ 一
のやうな『それ』に対する「説明」はない。
従って、
(31)により、
(32)
川島優子氏が、言ふ所の「白話特有の構造を持つ文」である、
⑤ 只‐管要纏我。
⑥ 端‐的看不出這婆‐子的本‐事来。
⑥ 西門慶促‐忙促-急儧‐造不出床来。
⑦ 吃了不多酒。
等は、「返り点・括弧」を加へることが出来ないが故に、「漢文」ではない。
然るに、
(33)
③ 有読漢文者=
③ 有〔読(漢文)者〕⇒
③ 〔(漢文)読者〕有=
③ 〔(漢文を)読む者〕有り。
といふ風に「訓読」出来る。といふことは、
③ 有読漢文者。
といふ「漢文」と、
③ 漢文を読む者有り。
といふ「和文(訓読)」の間に、
③ 〔 ( ) 〕
といふ、「共通の補足構造」が有る。
といふことに、他ならならない。
(34)
② 君子不以其所以養人者害人=
② 君子不{以[其所‐以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
② 君子{[其〔(人)養〕所‐以者]以(人)害}不=
② 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所‐以の者を]以て(人を)害せ}不。
といふ風に、「訓読」出来るといふことは、
② 君子不以其所以養人者害人。
といふ「漢文(孟子)」と、
② 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
といふ「和文(訓読)」の間に、
② { [ 〔 (  ) 〕 ] (  )}
といふ、「共通の補足構造」が有る。
といふことに、他ならならない。
従って、
(30)~(34)により、
(35)
① 漢文の補足構造
② 和文の補足構造
③ 白話(中国語)の補足構造
に於いて、
①=②
といふ「等式」が成立する一方で、
①=③
といふ「等式」は、成立しない
従って、
(36)
その「意味」で、
訓読法の限界は、白話文、つまり口語の文章には適用できないことだといわれます。つまり、文語(文言)の文章だけしか訓読法で読むことができないのです(Webサイト:日本漢文の世界)。
といふことは、むしろ、「当然」である。
然るに、
(37)
① 漢文の補足構造
② 和文の補足構造
③ 白話(中国語)の補足構造
に於いて、
①=②
といふ「等式」が成立する一方で、
①=③
といふ「等式」は、成立しない。といふことは、
② 和文(日本語)と、
③ 白話(中国語)を、比較した際に、
② 和文(日本語)の方が、
① 漢文 に近い。
といふことを、意味してゐる。
然るに、
(38)
さすがに、現在においては、「漢文訓読法」でなければ、日本人だけでなく、中国人も中国古典は理解できない、などという倒錯した主張をなす者はいなくなった。今から考えてみれば「漢文訓読法」派は単に現代中国語ができなかっただけのことではなかったか、そのようにさえ思えてくる(勉誠出版、「訓読論」、2008年、2頁)。
といふ「主張」は、
③ 白話(中国語)と、
② 和文(日本語)を、比較した際に、
③ 白話(中国語)の方が、
① 漢文 に近い。
といふことを、「前提」に、してゐる。
従って、
(37)(38)により、
(39)
「漢文訓読法」でなければ、日本人だけでなく、中国人も中国古典は理解できない。
といふ「主張」を、「倒錯した主張」である。とすることは、必ずしも、適当ではない。
平成27年09月22日、毛利太。
コメント (0)
コメントの投稿
前のページ(「鏡の中 上下左右(知恵袋、FAQ)Ⅱ」)
次のページ(「返り点(ミラーイメージ)」。)
プロフィール

タカ

Author:タカ
写真は蛍雪時代(高三)。この頃に、漢文が好きになりました。

リンク
このブログをリンクに追加する
最近の記事
月別アーカイブ
ブログ内検索
RSSフィード
最近のコメント