漢文訓読のアルゴリズム・返り点(括弧)Ⅲ。 - 返り点に対する「括弧」の用法について提案

漢文訓読のアルゴリズム・返り点(括弧)Ⅲ。

― 「2月24日の記事」を書き直します。「括弧」は有ります。―
(01)
管到というのは「上の語が、下のことばのどこまでかかるか」ということである。なんことはない。諸君が古文や英語の時間でいつも練習している、あの「どこまでかかるか」である。漢文もことばである以上、これは当然でてくる問題である。管到の「管」は「領(おさめる)」の意味とほぼ同じと考えてよい。
(二畳庵主人、漢文法基礎、1984年、389頁)
(02)
① 囗(囗)。
② 囗(囗囗)。
③ 囗(囗囗囗)。
に於いて、囗が「任意の漢字」である時、
① 囗の「管到」は「1字」であり、
② 囗の「管到」は「2字」であり、
③ 囗の「管到」は「3字」である。
とする。
(03)
④ 囗(囗×N)
であることを、すなはち、
④ 囗の「管到」が「N字」である。
といふことを、
④ 囗(N)
といふ風に、書くことにする。
従って、
(02)(03)により、
(04)
① 有欲揮刀断麻者。
に於いて、
① 有(6)⇔
① 有(欲揮刀断麻者)。
従って、
(04)により、
(05)
① 有(欲揮刀断麻者)。
に於いて、
① 欲(4)⇔
① 有(欲(揮刀断麻)者)。
従って、
(05)により、
(06)
① 有(欲(揮刀断麻)者)。
に於いて、
① 揮(1)⇔
① 有(欲(揮(刀)断麻)者)。
従って、
(06)により、
(07)
① 有(欲(揮(刀)断麻)者)。
に於いて、
① 断(1)⇔
① 有(欲(揮(刀)断(麻))者)。
従って、
(02)~(07)により、
(08)
① 有欲揮刀断麻者。
の「管到」が、
① 有(6)
① 欲(4)
① 揮(1)
① 断(1)
であるならば、その時に限って、
① 有欲揮刀断麻者=
① 有(欲(揮(刀)断(麻))者)。
である。
(09)
① ( ( ( )( ) ) )
では「読みにくい」ため、
①  [ 〔 ( )( ) 〕 ]
とする。
従って、
(08)(09)により、
(10)
① 有欲揮刀断麻者=
① 有[欲〔揮(刀)断(麻)〕者]。
である。
然るに、
(11)
① 有 は「叙述語(predicate)」であって、
① 欲 は「叙述語(predicate)」であって、
① 揮 は「叙述語(predicate)」であって、
① 断 は「叙述語(predicate)」である。
然るに、
(12)
漢語文法の基礎となっている文法的な関係として、次の四つの関係をあげることができる。
(一)主述関係  主語 ― 述語
(二)修飾関係 修飾語 ― 被修飾語
(三)補足関係 叙述語 ― 補足語
(四)並列関係 並列語 ― 並列語
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、281~284頁改)
(13)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)
従って、
(01)(10)~(13)により、
(14)
① 有[欲〔揮(刀)断(麻)〕者]。
① [〔(刀)揮(麻)断〕欲者]有。
に於いて、
① 前者が、「漢文の語順」であるのに対して、
① 後者は、「国語の語順」であって、尚且つ、
①  [ 〔 ( )( ) 〕 ]
①  [ 〔 ( )( ) 〕 ]
は、「管到(補足構造)」を表してゐる。
従って、
(14)により、
(15)
① 有欲揮刀断麻者=
① 有[欲〔揮(刀)断(麻)〕者]。
に於いて、
① 有[ ]⇒[ ]有
① 欲〔 〕⇒〔 〕欲
① 揮( )⇒( )揮
① 断( )⇒( )断 
といふ「倒置」を行ふと、
① 有欲揮刀断麻者=
① 有[欲〔揮(刀)断(麻)〕者]⇒
① [〔(刀)揮(麻)断〕欲者]有=
① [〔(刀を)揮って(麻を)断たんと〕欲する者]有り。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
然るに、
(16)
① 1234567
は「七個の、一桁の数字」であって、
①「百二十三万四千五百六十七」ではない。とする。
従って、
(17)
① 7521436
も「七個の、一桁の数字」である。とする。
然るに、
(18)
① 7[5〔2(1)4(3)〕6]。
に於いて、
① 7[ ]の中に「7よりも、大きい数字」は無い。
① 5〔 〕の中に「5よりも、大きい数字」は無い。
① 2( )の中に「2よりも、大きい数字」は無い。
① 4( )の中に「4よりも、大きい数字」は無い。
従って、
(18)により、
(19)
① 7521436=
① 7[5〔2(1)4(3)〕6]。
に於いて、
① 7[ ]⇒[ ]7
① 5〔 〕⇒〔 〕5
① 2( )⇒( )2
① 4( )⇒( )4
といふ「倒置」を行ふと、「必然的に」、
① 7[5〔2(1)4(3)〕6]⇒
① [〔(1)2(3)4〕56]7=
① 1234567。
といふ「ソート(並び替へ)」が、成立する。
然るに、
(20)
① 有欲揮刀断麻者=
① 7521436。
といふ「代入(substitution)」は、可能である。
従って、
(15)(19)(20)により、
(21)
① 有欲揮刀断麻者=
① 7521436=
① 7[5〔2(1)4(3)〕6]。
に於いて、
① 7[ ]⇒[ ]有
① 5〔 〕⇒〔 〕欲
① 2( )⇒( )揮
① 4( )⇒( )断
といふ「倒置」を行ふと、
① 7[5〔2(1)4(3)〕6]⇒
① [〔(刀)揮(麻)断〕欲者]有=
① [〔(刀を)揮って(麻を)断たんと〕欲する者]有り。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
従って、
(15)(19)(21)により、
(22)
① 有欲揮刀断麻者=
① 7521436。
といふ「順番」を、
① 刀揮麻断欲者有=
① 1234567。
といふ「順番」に「変換」する「括弧」が、
①  [ 〔 ( )( ) 〕 ]
①  [ 〔 ( )( ) 〕 ]
であるが故に、
① 有欲揮刀断麻者。
に対して、
①  [ 〔 ( )( ) 〕 ]
といふ「括弧」を与へることは、
① 有欲揮刀断麻者=
① 7521436。
といふ「代入(substitution)」に、「対応」する。
然るに、
(23)
有=7=下
欲=5=二
揮=2=レ
刀=1=
断=4=一レ
麻=3=
者=6=上
従って、
(24)
① 有欲揮刀断麻者=
① 有[欲〔揮(刀)断(麻)〕者]⇒
① [〔(刀)揮(麻)断〕欲者]有=
① 刀を揮って麻を断たんと欲する者有り。
の「返り点」は、
① 下 二 レ 一レ 上
である。
然るに、
(25)
有=9=乙
欲=7=下
揮=3=二
快=1
刀=2=一
断=6=中
乱=4
麻=5=上
者=8=甲
従って、
(26)
② 有欲揮快刀断乱麻者=
② 有[欲〔揮(快刀)断(乱麻)〕者]⇒
② [〔(快刀)揮(乱麻)断〕欲者]有=
② 快刀を揮って乱麻を断たんと欲する者有り。
の「返り点」は、
② 乙 下 二 一 中 上 甲
である。
然るに、
(27)
有=10=乙
欲=8=下
揮=3=二
快=1
刀=2=一
断=6=二
乱=4
麻=5=一
事=7=上
者=9=甲
従って、
(27)により、
(28)
③ 有欲揮快刀断乱麻事者=
③ 有[欲〔揮(快刀)断(乱麻)事〕者]⇒
③ [〔(快刀)揮(乱麻)断事〕欲者]有=
③ 快刀を揮って乱麻を断たん事を欲する者有り。
の「返り点」は、
③ 乙 下 二 一 二 一 上 甲
である。
cf.
有下欲二
然るに、
(14)(24)(26)(28)により、
(29)
①  [ 〔 ( ) ( ) 〕 ]
②  [ 〔 ( ) ( ) 〕 ]
③  [ 〔 ( ) ( ) 〕 ]
といふ「括弧」は、
① 有欲揮 刀断 麻 者。
② 有欲揮快刀断乱麻 者。
③ 有欲揮快刀断乱麻事者。
といふ「漢文」の、「管到(補足構造)」を表してゐる。
然るに、
(30)
③ 乙 下 二 一 二 一 上 甲
③  [ 〔 ( ) ( ) 〕 ]
に於いて、
③「返り点」は、
③「括 弧」に、等しい。
従って、
(24)~(30)により、
(31)
①  [ 〔 ( ) ( ) 〕 ]
②  [ 〔 ( ) ( ) 〕 ]
③  [ 〔 ( ) ( ) 〕 ]
といふ「括弧」は、
① 有欲揮 刀断 麻 者。
② 有欲揮快刀断乱麻 者。
③ 有欲揮快刀断乱麻事者。
といふ「漢文」の、「管到(補足構造)」を表してゐる。ものの、
① 下 二 レ 一レ 上
② 乙 下 二 一 中 上 甲
③ 乙 下 二 一 二 一 上 甲
といふ「返り点」に於いて、
①と②は、「管到(補足構造)」を表してゐない。
従って、
(31)により、
(32)
① 下 二 レ 一レ 上
② 乙 下 二 一 中 上 甲
といふ「返り点」は、「管到(補足構造)」ではなく、むしろ「順番」を表してゐる。
然るに、
(33)
括弧は、論理演算子のスコープ(scope)を明示する働きを持つ。スコープは、論理演算子の働きが及ぶ範囲のことをいう。(産業図書、数理言語学辞典、2013年、47頁:命題論理、今仁生美)。
従って、
(34)
「管到」といふのは、英語でいふ「scope」であって、「scope」は、「括弧」で表すのが、普通である。
加へて、
(35)
① 下 二 レ 一レ 上
② 乙 下 二 一 中 上 甲
③ 乙 下 二 一 二 一 上 甲
と書くよりも、
①  [ 〔 ( ) ( ) 〕 ]
②  [ 〔 ( ) ( ) 〕 ]
③  [ 〔 ( ) ( ) 〕 ]
と書く方が、「簡単」である。
(36)
いづれにせよ、
① 有欲揮 刀断 麻 者。
② 有欲揮快刀断乱麻 者。
③ 有欲揮快刀断乱麻事者。
といふ「漢文」には、「管到(補足構造)」があって、その「管到(補足構造)」は、「括弧」によって明示することが、出来る。
従って、
(37)
「管到(補足構造)」=「括弧」は、有ります。
平成28年02月25日、毛利太。
コメント (0)
コメントの投稿
前のページ(日本語、英語、論理学。)
次のページ(漢文訓読、アルゴリズム、返り点。)
プロフィール

タカ

Author:タカ
写真は蛍雪時代(高三)。この頃に、漢文が好きになりました。

リンク
このブログをリンクに追加する
最近の記事
月別アーカイブ
ブログ内検索
RSSフィード
最近のコメント