「其与 寧不若」は分りにくい。 - 返り点に対する「括弧」の用法について提案

「其与 寧不若」は分りにくい。

(01)
① 寧為鶏口無為牛後=
① 寧為(鶏口)無〔為(牛後)〕⇒
① 寧(鶏口)為〔(牛後)為〕無=
① 寧ろ(鶏口と)為るも〔(牛後と)為る〕無かれ=
① むしろ、鶏口となるとしても、牛後となるな(十八史略)。
然るに、
(02)
② 為牛後不若為鶏口=
② 為(牛後)不[若〔為(鶏口)〕]⇒
② (牛後)為[〔(鶏口)為〕若]不=
② (牛後と)為るは[〔(鶏口と)為るに〕若か]不=
② 牛後と為ることは、鶏口と為ることに及ばない(作例)。
cf.
② 百聞は一見にしかず(漢書)。
然るに、
(03)
② 牛後と為ることは、鶏口と為ることに及ばない。
のであれば、
② 鶏口と為ることの方が、牛後となることより、好ましい。
(04)
② 鶏口と為ることの方が、牛後となることより、好ましい。
のであれば、
② 牛後となるより、鶏口となるべきである
然るに、
(05)
むしろ①【《寧(ろ)】(副)①どちらか一つに決めければならない場合に、自分としては、まあその方を選ぶという判断・気持ちを表わす。
(三省堂、新明解 国語辞典、1991年、1258頁)
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
② 牛後と為ることは、鶏口と為ることに及ばない。
のであれば、
③ 牛後となるより、むしろ、鶏口となるべきである。
然るに、
(07)
③ 牛後となるより、むしろ、鶏口となるべきである。
といふのであれば、
① むしろ、鶏口となるとしても、牛後となるな(十八史略)。
といふ、ことになる。
従って、
(06)(07)により、
(08)
むしろ鶏口と為るも、牛後と為るなかれ。
② 牛後と為るは、鶏口と為るにしかず
③ 牛後と為るよりは、むしろ、鶏口と為るになるべきである
に於いて、
①=②=③ である。
然るに、
(09)
② ご懸念には及びません(心配する必要はありません)。
といふ「例文」がさうであるやうに、
② にしかず=に及ばない=必要はない
従って、
(09)により、
(10)
② にしかず =必要はない。
に対して、
③ べきである=必要はない。
ではない
従って、
(08)(10)により、
(11)
③ 牛後と為るよりは、むしろ、鶏口と為るになるべきである。
④ 牛後と為るよりは、むしろ、鶏口と為るにしかず(必要はない)。
に於いて、
③=④ ではない
従って、
(11)により、
(12)
③ その人が、牛後と為るよりは、むしろ、(その人は)鶏口と為るになるべきである。
④ その人が、牛後と為るよりは、むしろ、(その人は)鶏口と為るにしかず(必要はない)。
に於いて、
③=④ ではない
然るに、
(13)
⑤ 与其得小人寧不若得愚人=
⑤ 与〔其得(小人)〕寧不[若〔得(愚人)〕]=
⑤ 〔其(小人)得〕与寧[〔(愚人)得〕若]不=
⑤ 〔其の(小人を)得る〕与りは寧ろ[〔(愚人を)得るに〕若か]不(資治通鑑-周紀)=
⑤ 徳のないこざかしい小人を得るよりも、むしろ愚かでも徳のある愚人を得るほうがよい(教学者、風呂で覚える漢文、1998年、50頁)。
従って、
(13)により、
(14)
④ 与其為牛後寧不若為鶏口=
④ 与〔其為(牛後)〕寧不[若〔為(鶏口)〕]=
④ 〔其(牛後)為〕与寧[〔(鶏口)為〕若]不=
④ 〔其の(牛後と)為る〕与りは寧ろ[〔(鶏口と)為るに〕若か]不=
④ その人が、牛後と為るよりは、むしろ、(その人は)鶏口と為るにしかず(及ばない)。
であれば、
③ その人が、牛後と為るよりは、むしろ、(その人は)鶏口と為るになるべきである。
といふ、「意味」になる。
従って、
(12)(14)により、
(15)
③ その人が、牛後と為るよりは、むしろ、(その人は)鶏口と為るになるべきである
④ その人が、牛後と為るよりは、むしろ、(その人は)鶏口と為るにしかず(及ばない)。
に於いて、
③=④ ではなく
尚且つ、
③=④ である
従って、
(14)(15)により、
(16)
④ 与其為牛後寧不若為鶏口 ⇒
④ 其の、  牛後と為る与りは、寧ろ、       鶏口と為るに若か不=
④ その人が、牛後と為るよりは、むしろ、(その人は)鶏口と為るにしかず(必要はない)。
といふ「訓読」は、「日本語」としては、「矛盾」する。
従って、
(13)(16)により、
(17)
④ 与其為牛後寧不若為鶏口。
⑤ 与其得小人寧不若得愚人。
といふ「漢文」は、「分りにくい」。
(18)
④ 与其為牛後寧不若為鶏口。
⑤ 与其得小人寧不若得愚人。
のやうな、
⑤ 其与A寧不若B。
は、要するに、
⑤   A 不若B=Aは及ばないの方がAよりも上である)。
といふ、「意味」である。
然るに、
(19)
反語とは、表現されている内容と反対のことを意味する言い方で、多くは疑問形と同じ形であり、けっきょく、肯定している場合は否定に、否定している場合は肯定の内容になる。
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、45頁、1973年)
従って、
(18)(19)により、
(20)
⑤ 其与A寧不若B。
⑥ 其与A寧若B
に於いて、
⑤=⑥ であるならば、
⑥ は、「反語」である。
従って、
(21)
⑥ 与其従僻人之士也、若従僻世之士
⑥ 与[其従〔僻(人)之士〕]也、豈若[従〔僻(世)之士〕]哉⇒
⑥ [其〔(人)僻之士〕従]与也、豈[〔(世)僻之士〕従]若哉⇒
⑥ [其の〔(人を)僻くるの士に〕従はん]与りは、豈に[〔(世を)僻くるの士に〕従ふに]若かんや(論語、微子)=
⑥ (立派な人に仕えたいと)人を選り好みする者に従うよりも、世間を逃れて生きる者に従がったほうがよかろう(教学者、風呂で覚える漢文、1998年、50頁)。
は、「反語」である。
平成29年10月29日、毛利太 。
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