「其与 寧不若」は分りにくい(Ⅱ)。 - 返り点に対する「括弧」の用法について提案

「其与 寧不若」は分りにくい(Ⅱ)。

(01)
① 寧得愚人無得小人=
① 寧得(愚人)無〔得(小人)〕⇒
① 寧(愚人)得〔(小人)得〕無=
① 寧ろ(愚人を)得るも〔(小人を)得ること〕無かれ=
① むしろ、愚人を得るとしても、小人を得てはならない(作例)。
cf.
 ① 寧為鶏口無為牛後=
 ① むしろ、鶏口となるも、牛後となる無かれ(十八史略)。
(02)
② 与其得小人寧得愚人=
② 与〔其得(小人)〕寧得(愚人)⇒
② 〔其(小人)得〕与寧(愚人)得=
② 〔其の(小人を)得る〕与りは寧ろ(愚人を)得よ=
②(その、)小人を得るよりは、むしろ愚人を得るほうが良い(作例)。
cf.
 ② 其得牛後=S+V+O。
 であるため、
 ②「其の」は、「the(その)」ではない。
(03)
③ 得小人不若得愚人=
③ 得(小人)不[若〔得(愚人)〕]⇒
③ (小人)得[〔(愚人)得〕若]不=
③ (小人を)得るは[〔(愚人を)得るに〕若か]不=
③ 小人を得ることは、愚人を得ることに及ばない(作例)。
cf.
 ③ 百聞不若一見=
 ③ 百聞は一見にしかず(漢書)。
(04)
④ 与其得小人寧不若得愚人=
④ 与〔其得(小人)〕寧不[若〔得(愚人)〕]⇒
④ 〔其(小人)得〕与寧[〔(愚人)得〕若]不=
④ 〔其の(小人を)得る〕与りは寧ろ[〔(愚人を)得るに〕しか]ず(資治通鑑-周紀)=
④ 徳のないこざかしい小人を得るよりも、むしろ愚かでも徳のある愚人を得るほうがよい(教学者、風呂で覚える漢文、1998年、50頁)。
然るに、
(05)
① むしろ、愚人を得るとしても、小人を得てはならない
②(その、)小人を得るよりは、むしろ愚人を得るほうが良い
③ 小人を得ることは、愚人を得ることに及ばない(愚人を得るほうが上である)。
④(徳のないこざかしい)小人を得るよりも、(むしろ愚かでも徳のある)愚人を得るほうが良い
に於いて、
①=②=③=④ である。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
① 寧得愚人無得小人。
② 与其得小人寧得愚人。
③ 得小人不若得愚人。
④ 与其得小人寧不若得愚人。
に於いて、
①=②=③=④ である。
然るに、
(07)
④ ご懸念には及びません=心配する必要はありません
といふ「例文」が、さうであるやうに、
④ 及ばない=必要はない。
従って、
(05)(07)により、
(08)
② 小人を得るよりは、むしろ、愚人を得るほうが良い。
④ 小人を得るよりは、むしろ、愚人を得る必要はない
に於いて、
②=④ である。
然るに、
(09)
② 小人を得るよりは、むしろ、愚人を得るほうが良い。
④ 小人を得るよりは、むしろ、愚人を得る必要はない
に於いて、明らかに、
②=④ ではないし、固より、
④ 小人を得るよりは、むしろ、愚人を得る必要はない
といふ「日本語」は、「意味不明」である。
従って、
(04)(09)により、
(10)
④ 与其得小人寧不若得愚人=
④ 与〔其得(小人)〕寧不[若〔得(愚人)〕]⇒
④ 〔其(小人)得〕与寧[〔(愚人)得〕若]不=
④ 〔其の(小人を)得る〕与りは寧ろ[〔(愚人を)得るに〕しか]ず=
④ 小人を得るよりも、愚人を得るほうがよい。
といふ「訓読」は、「分りにくい」。
然るに、
(11)
与其得小人得愚人。
③ 得小人不若得愚人。
に於いて、
②と③を「合はせる」と、
②+③=
与其得小人不若得愚人。
然るに、
(06)(11)により、
(12)
③ __得小人_不若得小人。
④ 与其得小人寧不若得愚人。
に於いて、
③=④ である。
従って、
(13)
④ 与其得小人寧不若得愚人=
④ 其の小人を得る与りは、寧ろ愚人を得るにしかず。
であるならば、
④ 与其得小人寧不若得愚人=
④(その、)小人を得るよりは、むしろ、愚人を得る必要はない
となって、「意味不明」である。
と思はれ方が、ゐるのであるあれば、その場合は、
④ 与其得小人寧不若得愚人=
③ __得小人_不若得愚人。
であることを、思ひ出すべきである。
(14)
④ 与其得小人寧不若得小人=
③ __得小人_不若得小人=
③ 得(小人)不[若〔得(愚人)〕]⇒
③ (小人)得[〔(愚人)得〕若]不=
③ (小人を)得るは[〔(愚人を)得るに〕若か]不=
③ 小人を得ることは、愚人を得ることに及ばない
のであれば、
③ 小人を得ることよりも、愚人を得ることのほうが上である
といふことになり、
③ 小人を得ることよりも、愚人を得ることのほうが上である
であるならば、
④ 徳のないこざかしい小人を得るよりも、むしろ愚かでも徳のある愚人を得るほうがよい(教学者、風呂で覚える漢文、1998年、50頁)。
といふ、ことになる。
従って、
(15)
要するに、 

④ 与其得小人寧不若得愚人。
に於いて、
④ 与其   寧
は、「余分」である。
然るに、
(16)
④ 与其得小人寧不若得愚人。
に於いて、
④ 与其   寧
といふ「三字」が、「余分」である「分」、
与其得小人不若得愚人。
といふ「言ひ方」は、
③ __得小人_不若得愚人。
といふ「意味」を、「強化」するに、「違ひ」無い。
平成29年10月31日、毛利太。
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